こんにちは!つかさです。
この記事では、2024年度調剤報酬改定における変更点・新設項目について、わかりやすく解説していきたいと思います。
また、今回はそこから一歩踏み込んで、厚生労働省がどういったことを薬剤師に期待しているのかについても分析していきます。
さて、早速ですが、今回の改定で皆さんこのような感想を抱いたのではないでしょうか?
- 新設や変更点が多すぎて、何がどう変わったのかわからない
- おおまかには把握したけど、現場ですぐに対応できない
- 国が薬剤師に何を求めているのかわからない
実際ある程度読み込んだつもりでいる私でも、すぐに算定要件が出て来なかったり、ほかの加算と間違って覚えていたりなんてことが多々あります。
改定の直後はいつも混乱してしまいますね。
今回の改定はそれだけ大幅な変更点の多い、骨太な内容のものとなっていたかと思います。
この記事を読めば、以下のことが可能となります。
- 2024年度調剤報酬改定の変更・新設項目とその点数について網羅的に把握できます
- それぞれの項目の概要についての理解できます
- これからの薬剤師に求められていること、期待されていることがわかります
保険薬剤師は、保険調剤を行うことにより報酬を得て、利益を出すことができます。
これらを理解することは、これから薬剤師として活躍するための大きな助けとなるでしょう。
この記事を書いている私は、薬剤師歴18年。某薬局グループでエリアマネージャー兼法令室長をしております。
2024年度改定の内容についてまとめたり、分析を行っていますので、本記事ではそれらを皆さんとも共有したいと思います。
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第一章:2024年度調剤報酬改定の変更点一覧と解説
まずは主要な変更点について一覧表にまとめました。
その中でいくつかをピックアップして解説していきたいと思います。
2024年度調剤報酬改定の変更点と点数表
項目 | 変更前 | 変更後 |
---|---|---|
調剤基本料1 | 42点 | 45点 |
調剤基本料2 | 26点 | 29点 受付回数4000↑かつ、上位3位の 保険医療機関計7割↑の条件追加 |
調剤基本料3(イ・ロ・ハ) | イ 21点 ロ 16点 ハ 32点 | イ 24点 ロ 19点 ハ 35点 |
特別調剤基本料 | 7点 | 特別調剤基本料A 5点 特別調剤基本料B 3点 |
服薬管理指導料3 | 特養の短期入所生活介護 (ショートステイ)等の利用者に 対する算定が不明瞭 | 特養の短期入所生活介護 (ショートステイ)等の利用者に 対する算定が可能 |
連携強化加算 | 2点 | 5点 |
地域支援体制加算1 | 39点 | 32点 |
地域支援体制加算2 | 47点 | 40点 |
地域支援体制加算3 | 17点 | 10点 |
地域支援体制加算4 | 39点 | 32点 |
医療情報・システム基盤整備体制充実加算 | 「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」 | 「医療情報等取得加算」に 名称変更 |
服薬情報等提供料2 | 服薬情報等提供料2 20点(月1回まで) 患者等に対する情報提供に伴う評価あり | 服薬情報等提供料2 イ・ロ・ハ 20点(月1回まで) 患者等に対する情報提供に伴う評価なし |
無菌製剤処理加算(抗悪性腫瘍剤) | 混合のみ | 混合・希釈に対し算定可 |
無菌製剤処理加算(医療用麻薬) | 混合・希釈のみ | 混合・希釈・充填に対し算定可 |
重複投薬・相互作用等防止加算 (残薬調整に係るもの) | 30点 | 20点 |
特定薬剤管理指導加算1 | 10点 | イ 10点 ロ 5点 |
嚥下困難者用製剤加算 | 80点 | 廃止(自家製剤加算に一本化) |
吸入薬指導加算 | かかりつけ薬剤師指導料の 加算として算定不可 地域支援体制加算の服薬情報等提供料に相当する実績に含まれない | かかりつけ薬剤師指導料の 加算として算定可 地域支援体制加算の服薬情報等提供料に相当する実績に含まれる |
各項目について解説
調剤基本料の引き上げと調整
本改定では、賃上げの一環として、調剤基本料1-3が3点引き上げられました。基本的にほとんどの調剤薬局に対して報酬を引き上げたいという狙いかと思われます。
それと同時に、調剤基本料2に関してはひと月における処方箋の受付回数が4,000回を超え、処方箋受付回数が多い上位3つの保険医療機関の処方箋による調剤の割合が合計で7割を超える薬局についても算定対象となりました。
所謂医療モールに対する減算です。
また、特別調剤基本料についてはA(いわゆる敷地内薬局)とB(基本料の施設基準未届け)にわかれ、それぞれ減算される形となりました。
連携強化加算の引き上げ
連携強化加算については3点の引き上げがありました。その中で、施設基準に第二種協定指定医療機関の指定を受けていることが追加され、地域支援体制加算の該当の要件は廃止されました。
地域支援体制加算の引き下げ
地域支援体制加算1-4については軒並み7点の大幅な引き下げがありました。
その他にも、施設基準において以下のような変更・新設がありました。
- 薬局間連携による医薬品の融通等
- 麻薬小売業者の免許
- 集中率85%超の薬局は、後発品の調剤割合70%以上
- 夜間・休日の調剤、在宅対応体制(地域の輪番体制含む)の周知
- 在宅薬剤管理の実績 24回以上
- かかりつけ薬剤師の届出
- 一般用医薬品及び要指導医薬品等(基本的な48薬効群)の販売
- 緊急避妊薬の取扱いを含む女性の健康に係る対応
- 当該保険薬局の敷地内における禁煙の取扱い
- たばこの販売禁止(併設する医薬品店舗販売業の店舗を含む)
実績要件に小児特定加算が追加されました。
また、地域支援体制加算1・2における実績ごとの必要回数が緩和され、地域支援体制加算2においては満たす必要のある項目数が増加される等しました。
服薬情報等提供料2の調整
服薬情報等提供料2の内容に変更がありました。イ・ロ・ハと細分化され、保健医療機関・リフィル処方箋処方医・介護支援専門員への情報提供に対してそれぞれの項目を選択する必要があります。
特筆すべき内容としては、ロにおいて介護支援専門員(ケアマージャー)への情報提供でも算定可能となったことです。
これにより、算定機会は増えることになるかと考えられますが、実際に在宅業務を行っている患者さんに対しては算定できない点に注意が必要です。あくまで外来の要介護者に対して算定が可能との認識でよいかと思われます。
その代わりといってはなんですが、患者もしくはその家族等への情報提供のみでは算定不可となりました。これまで患者からの電話等での問い合わせに対して回答をすることで算定を行うことが可能でしたが、こちらは今後できなくなります。
無菌調剤処理加算の拡充
無菌調剤処理加算については、従来まででは算定できなかった行為が算定の対象内となりました。
具体的には、抗悪性腫瘍剤における希釈、医療用麻薬における充填業務がこれにあたります。
これらは従来、労力の割に報われない行為であったため、適切に評価された形となります。
特定薬剤管理指導加算1の変更
特定薬剤管理指導加算1に関しては、実質的な大幅減算となりました。
これまで該当医薬品が処方されていた患者に必要な指導を行った場合、その都度算定することができる加算でした。
本改定からは新たに処方された場合もしくは用法・用量変更時、副作用等薬剤師が必要があると判断して指導を行った場合の3つのタイミングの際に限られます。
点数としても、新たに処方された場合は従来通り10点であるが、用法・用量変更時、副作用等薬剤師が必要があると判断して指導を行った場合は5点への引き下げとなりました。
薬歴(薬剤服用歴)に関して
薬歴(薬剤服用歴)に関しては、本改定よりそれぞれの算定項目から薬歴記載に関しての文言が削除されております。
ただし、こちらは不要になったというわけではなく、通則(5)(参照:診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について 保医発0305第4号 別添3 調剤報酬点数表に関する事項 厚生労働省)に集約された形となり、従来通り薬剤服用歴への記載は必要となりますのでご留意ください。
また、本改定より
といった文言に変更されました。これは現在話し合われている薬歴の簡潔化と、電子薬歴が増えたことを受けての定型文問題に対してのものと考えられます。
実際にどのレベルまで簡潔化して良いのか、定型文が許されないのかは今後の個別指導等の結果からわかっていくかと思います。
かかりつけ薬剤師業務に関して
本改定では、かかりつけ薬剤師業務における負担感軽減と評価の拡充を図るために以下の見直しが行われました。
- 24時間対応について、「休日、夜間を含む時間帯の相談に応じる体制」「休日・夜間等のやむを得ない場合は薬局単位での対応でも可能」と表現が緩和されました。
- かかりつけ薬剤師と連携する薬剤師が複数指定可能となりました。
- 吸入薬指導加算や東西後薬剤管理指導料1・2の算定が可能となりました。
- 勤務表を渡す必要がなくなりました。
- 同意書に経歴を記載する必要がなくなりました。
第二章:2024年度調剤報酬改定の新設項目一覧と解説
次に、主要な新設項目について一覧表にまとめました。
こちらもその中でいくつかをピックアップして解説していきたいと思います。
2024年度調剤報酬改定の新設項目と点数表
項目名 | 点数 |
---|---|
医療DX推進体制整備加算3・2・1 | 4点・6点・7点(月1回まで) |
在宅薬学総合体制加算1 | 15点 |
在宅薬学総合体制加算2 | 50点 |
特定薬剤管理指導加算3 | 5点 |
調剤後薬剤管理指導料1 | 60点(月1回まで) |
調剤後薬剤管理指導料2 | 60点(月1回まで) |
在宅移行初期管理料 | 230点(1回に限り) |
在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料1 夜間訪問加算 休日訪問加算 深夜訪問加算 | 400点 600点 1000点 |
在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料2 | イ 40点 ロ 20点 |
施設連携加算(外来服薬支援料2の加算) | 50点(月1回まで) |
各項目について解説
医療DX推進体制整備加算3・2・1
マイナ保険証利用により得られる薬剤情報等を診察室等でも活用できる体制を整備するとともに、電子処方箋及び電子カルテ情報共有サービスの整備、マイナ保険証の利用率を要件とし、医療DXを推進する体制を評価するものとして新設されました。
また、令和6年7月17日に厚生労働省より、マイナ保険証の利用率に対応する具体的な点数の発表もされました。(参照:医療DX推進体制整備加算・医療情報取得加算の見直しについて)
2024年10月より、利用率5%:10%:15%=4点:6点:7点(月に1回まで)
2025年1月より、利用率10%:20%:30%=4点:6点:7点(月に1回まで)となります。
これらは今後も変更の可能性があるため、最新情報に注目していきましょう。
在宅薬学総合体制加算1,2
在宅患者調剤加算が廃止され、新たに設置された加算となります。
在宅薬学総合体制加算1に関しては在宅患者調剤加算と同点数であることもあり、在宅医療を行うにあたっての一般的な設備や実績があれば算定することが可能となります。
在宅患者調剤加算2に関しては、加算1の要件に加えてがん末期などターミナルケア患者に対する体制もしくは小児在宅患者に対する体制や実績等、より高度な整備体制・実績が求められます。
クリーンベンチや医療用麻薬を揃えることは、価格や取扱の面からも簡単ではなかったですが、ハードルが下がりましたね。
特に既にターミナルケアを行っていた薬局にとってはうれしい措置です!
特定薬剤管理指導加算3
服薬指導を行う際に、特に患者に対して重点的に丁寧な説明が必要となる場合における評価として新設されました。
こちらは特定薬剤管理指導加算1のハイリスク薬と区別をつけられた形となっています。
具体的には、
- RMPの策定が義務づけられている医薬品について
- 緊急安全性情報、安全性速報が発出された医薬品について
- 選定療養の対象となる先発医薬品について
- 医薬品供給が不安定であるために、別の銘柄で用意をした医薬品について
を説明、指導した際に算定可能となります。
調剤後薬剤管理指導料1,2
これらは新設枠ではありますが、従来の調剤後薬剤管理指導加算の廃止からの算定料への格上げの形となります。
糖尿病に関しては使用薬剤の種類によらなくなりました。
また、心不全に対してのフォローアップについての項目が追加となりました。
在宅移行初期管理料
退院直後など、計画的に実施する訪問薬剤管理指導の前の段階で患家を訪問し、多職種と連携して今後の訪問薬剤管理指導のための服薬状況の確認や薬剤の管理等の必要な指導等を実施した場合の評価として新設されました。
こちらに関しても、無菌調剤処理加算と同様に従来の労力に見合わなかった業務内容についての適切な評価がされた項目追加と言えるかと思います。
在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料1(夜間・休日・深夜訪問加算)
末期の悪性腫瘍や注射による麻薬の投与が必要な患者の急変時等の医師の指示に基づいた緊急訪問について、休日や夜間・深夜に実施した場合の加算が新設されました。
あくまで末期の悪性腫瘍や注射による麻薬の投与が必要な患者に対してのものだけであることに注意が必要です。
これらも上記同様に、従来の労力に見合わなかった業務内容についての適切な評価がされた項目追加と言えるかと思います。
在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料2
往診同行の際などに、 患者へ処方箋を交付する前に処方医と処方内容を相談し、処方に係る提案が反映された処方箋を受け付けた場合に算定できる項目が追加されました。
これらも上記同様に、従来の労力に見合わなかった業務内容についての適切な評価がされた項目追加と言えるかと思います。
疑義照会ではなく、医療の現場での提案が評価される、新しいパターンの項目ですね!
施設連携加算
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)の施設職員と協働して、日常の服薬管理が容易になるよう薬学的観点から支援や指導等を実施することの評価が新設されました。
これらも上記同様に、従来の労力に見合わなかった業務内容についての適切な評価がされた項目追加と言えるかと思います。
また、特別養護老人ホームに関しては、そもそも外来服薬支援料2の算定に関して査定を受けたとの報告が以前まで散見されました。医師や看護師が常駐している等の理由のためです。
本加算の新設により、外来服薬支援料2についても公に可能となったとも言えるかと思います。
国が薬剤師に求めていることまとめ(第一・二章まとめ)
以上を踏まえまして、国としてこれからの薬剤師には何を期待し求めているのか。まとめてみたいと思います。
まず前提として、今回の調剤報酬が改定の概要として、以下の三点が挙げられておりました。
- 地域の医薬品供給拠点としての役割を発揮するための体制評価の見直し
- 質の高い在宅業務の推進
- かかりつけ機能を発揮して患者に最適な薬学的管理を行うための薬局・薬剤師業務の評価の見直し
これらを中心に、議論を繰り返し、今回の改定内容は決定されております。
その結果の改定内容から読み取れるメッセージを私の言葉で勝手に意訳すると以下のようになりました。
語弊があるかもしれないことはご了承ください。
- とにかく在宅をやれよ!
- 医療機関とより強く連携しろよ!
- 医者だけじゃなく、ケアマネ、訪看等の多職種とも積極的に連携しろよ!
- 緩和や抗がん剤混注、特養、医療的ケア児への対応頑張ってくれていたところに報酬つけといたぞ。これからもよろしくな!
- かかりつけ機能を薬局単位でいいからもっと強化していけよ!
- 地域で協力して、感染症対策や夜間休日対応も切れ間なくやっていってくれよな!
- 供給不足品目の対応も引き続きよろしくな!
- ついでに先発希望対策の選定療養制度作ったから、その説明もよろしく!
- あとはDX化やマイナンバーカードの推進も頼んだぞ!
- いいからとにかく在宅をやれよ!
と、このようなところではないでしょうか。
方向性はわかりやすいですね!
この流れに沿って行けば、薬局としての報酬を継続的に維持・増加させていけるかと思います。
とはいえなかなか急激な変化を求めてきますね。
ある程度振り落としたいという思惑も感じます。
第三章:今回の改定はプラス?マイナス?さらなる深堀り考察
さて。ここからは、私の独断と偏見で考察・感想を述べさせていただきたいと思います。
本題は終わっているので、この先は無理に読まなくても大丈夫です!
薬剤師の賃上げは期待できるのか?
毎度毎度プラス改定と言いつつ、実質マイナス改定となっていた店舗が多かったのが、昨今の改定でした。
しかし、今回は改定の概要の一項目に医療従事者の賃上げが記載されていました。
ということは、流石にちゃんとしたプラス改定になっているのか……?
気になっている方も多いかと思います。
先に結論を申しますと、プラス改定と言っていいかと思います!
とはいえ、どの店舗にとっても、無条件でプラスになっているかというとそういうわけではありません。
また、店舗の性質によってその上昇率も大幅に変わっています。
それでは様々な形態の薬局にとって実際にどのくらい上がっているのか?
実際に数字を使って検証をしてみましょう!
プラスに働いた項目 | マイナスに働いた項目 | ||
調剤基本料1,2,3 | 3点↑ | 特別調剤基本料 | 2点↓ |
連携強化加算 | 3点↑ | 調剤基本料2の算定要件変更 | 条件追加 |
医療DX推進体制整備加算 | 新設 4-7点 | 地域支援体制加算 | 7点↓ |
在宅薬学総合体制加算 | 新設 | 特定薬剤管理指導加算1 | 算定制限 |
特定薬剤管理指導加算3 | 新設 | ||
吸入指導加算 | 条件緩和 | ||
調剤後薬剤管理指導料 | 格上げ | ||
在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料1 夜間・休日・深夜 | 新設 | ||
在宅移行初期管理料 | 新設 | ||
在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料 | 新設 | ||
施設連携加算 | 新設 |
大まかにですが、こんなところかと思います。
結果として左の方が多いから、今回はプラス改定!賃上げ確定!
とはいきませんね。細かく見ていきましょう。
プラスに働いた項目
まずは厚生労働省の賃上げの対象として一番明確である、基本料の3点引き上げです。
こちらは、敷地内薬局以外のほぼすべての薬局はその恩恵を受ける形となります。
そして、連携強化加算の3点引き上げ。
こちらは地域支援体制加算の算定によらなくなったこともあり、算定可能な薬局も増えたかと思います。
次いで、医療DX推進体制整備加算の新設。
こちらもマイナンバーカード推進の流れから、算定可能な薬局がほとんどかと思います。
当初は4点(月1回まで)のみでしたが、頑張り次第では6点、7点(月1回まで)も見えてきました。
マイナンバーカード推進の末端業務をさせられるのは少し癪ですが、それなりの報酬をつけてくれているので良しとしましょう。
全体にかかわるものは大体この辺りですね。
ここまでを合計すると、3+3+4=10点
(医療DXは6点で算定をし、全受付回数のうち2/3に対して算定ができたと仮定)
月に1500回処方箋受付をする薬局ならば、ひと月あたり15万円の増収です。
これはなかなか大きいですね!
賃上げも検討したくなりそうです。
もともと地域支援算定加算を算定していない薬局ならば、これだけが純粋に増加となるので、かなり嬉しい改定となったのではないでしょうか。
マイナスに働いた項目
しかし、問題はその地域支援体制加算ですね。
こちらは今回の改定で7点の引き下げとなりました。
なので、もともと地域支援体制加算をとっていた薬局は事情が変わります。
先ほどの増収と通算して、結果プラス3点となります。
これは月に1500回処方箋受付をする薬局ならば、ひと月あたり4万5千円の増収です。
スタッフ全体の賃上げを検討するには、少し心許ないですね。
この辺りに関しては、頑張っている薬局と比べて、特に頑張ってこなかった薬局(地域支援体制加算を算定していなかった薬局)が評価されるのはどうなのかといった怒りの声が各所で上がっていましたね。
地域支援体制加算を算定している薬局は基本在宅業務を行っているので、そちらの増収で補填といった考え方ですかね……?
また、地域支援体制加算2についてはより幅広い実績が求められることとなりました。単科の門前薬局として奮闘している薬局などは、継続しての算定が厳しくなることが予想されます。
次いで、薬局の特性によっては、特定薬剤管理指導加算1の要件変更の影響は非常に大きいかと思われます。
例えば、精神科・循環器科門前の薬局においては、該当の医薬品があればほぼベタで算定していた薬局も多いかと思います。
仮に循環器科門前、処方箋受付1500回として、そのうちの1200回で特定薬剤管理指導加算を算定していたとします。
そうすると、これだけで去年まではひと月あたり12万円もの報酬となっていたかと思います。
今回の改定でどれほど算定回数がどれほど減るのか。
それこそ仮定の話となりますが、現実的な話、特定薬剤管理指導料1のイが150件、ロが300件くらいでしょうか。
この場合、ひと月あたり3万円の報酬となります。
その差はひと月あたり9万円と、なかなか大きな減収となりそうです。
とはいえ、そもそもベタでそんなに算定できていたこと自体がおかしいと言われれば、それまでかもしれません。
特定管理薬剤指導加算3の存在はその穴を埋めてくれるかもしれません。
今後に注目ですね。
医療形態に対する減算
本改定において、敷地内薬局(特別調剤基本料A)に関しては本当に厳しい措置となりました。
まず、特別調剤基本料Aは5点と、もともと低かった7点からさらに低くなりました。
また、以下の加算は減点対象となります。
- 地域支援体制加算(100分の10)
- 後発医薬品調剤体制加算(100分の10)
- 在宅薬学総合体制加算(100分の10)
基本料+地域支援体制加算2+後発医薬品調剤体制加算3だけで考えても、受付回数1回あたり65点の減点。
敷地内薬局といえば広域病院の中にあることが多いですね。そうなると月の処方箋受付回数は1万件以上が期待されるので、ひと月あたりの減算は……。
この先の計算はなんだか怖いのでやめておきましょう!
そして、以下の項目については、敷地内の医療機関に対する情報提供を行っても、算定不可とされています。
- 服薬情報等提供料
- 特定薬剤管理指導加算2
- 吸入指導加算
- 服用薬剤調整支援料2
- 外来服薬支援料1 注2
- 調剤後薬剤管理指導料
さらには敷地内にある医療機関への処方箋料の減算という重いペナルティも課せられました。
これにより、敷地内薬局は身内である医療機関からも煙たがられる存在となってしまいます。
そこまでやるのかと思うほどボロボロにされてしまいましたね。(汗)
ここからさらに、敷地内薬局を所有するグループ全体への減算も検討されていた背景もあります。
敷地内薬局という形態を絶対に許したくないといった、厚生労働省の強い意思を感じてしまいますね。
そしてもう一つ特筆すべき点としては、調剤基本料2の算定要件変更による医療モールへの大幅減算ですね。
上位3位までというのはうまく考えたものだと、その影響を大きく受けながらも感心してしまいました。
基本料が1(45点)→2(29点)に落ちると、16点の減算。
地域支援体制加算2(40点)を算定できていた場合、かなり頑張って地域支援体制加算4(32点)を算定。
とはいえ正直地域支援体制加算4のハードルはかなり高いため、現実的なところで地域支援体制加算3(10点)を算定する可能性も大きいかと思います。
そうなると地域支援体制加算のみで30点の減算となります。
それにより、最低限である月の処方箋受付が4000回だとしても、4000×(16+30)×10=184万円
と、ひと月あたりだけで184万円もの大幅な減収となるでしょう。
この金額だけで薬剤師を3~4人雇えてしまいそうですね。(汗)
そもそもそれだけ効率よく稼げているでしょう?ということのようです。
とはいえなかなか厳しい減収ではないでしょうか。
第三章のまとめ
まとめると、
- 全体的にはプラス改定。
- 地域支援体制加算を算定していなかった薬局としては、ウハウハ改定。
- 地域支援体制加算をもともと算定していた薬局としては、渋めのプラス改定。
- ターミナルや小児在宅など、より専門的な在宅医療を頑張っていた薬局としては、報われ改定。
- 地域支援体制加算2を算定していた薬局の中で、継続を断念した薬局としては、しょんぼり改定。
- 特定薬剤管理指導加算1をほとんどの患者に対して算定できていた薬局としては、がっかり改定。
- 受付回数4000回越えの医療モールの薬局にとしては、涙目改定。
- 敷地内薬局にとっては、絶望改定。
と、このように言えるのではないかと思います。
感想としては、賃上げをテーマの一つとして掲げている割にはあまり振るわなかったという印象です。
この程度では物価上昇やインフレ率に勝てていないので、プラス改定になったと手放しで喜べるような内容ではなかったですね。
とはいえ、やることをやれば報酬を与えるよ!というスタンス自体は悪くないと思います。
薬剤師の求められている役割も広がり、また明確になってきました。
頑張って成果を出した薬剤師は、個人として評価されるようになるのではないでしょうか。
今後も頑張りに見合う報酬に期待していきたいところです。
最終章:君たちはどう生きるか
すみません。言ってみたかっただけです。(笑)
今後の薬剤師はどうなっていくのか。何を目指していけばいいのか。
少しだけ私の考えを話してみたいと思います。
それこそ私の独断と偏見だらけなので、異論・反論はどしどし受け付けております!
むしろ議論をしましょう!
個々の薬剤師にとっての、これからの薬局業界
私の見解では、今後個人個人の能力の高さがより活きる(評価される)時代になると考えております。
何故なら、企業としての「効率よく稼げる仕組み」はその効率の良さの分だけ叩かれ、ならされるからです。
現実問題、以前はクリニックの前に薬局という箱を用意して、そこで国家資格を持った薬剤師が指示通りに薬を拾って渡していればそれだけで十分な収益が得られました。そして箱が大きければ大きいほど、数が多ければ多いほど収益を伸ばすことができました。
ベタで取ることが可能な報酬が多く、なにより薬価差も大きかったため、数をこなすことが何より重要でした。
もちろんその時代ごとの苦労や辛さがあったことは大前提です。
しかし、ここ十数年の流れとして、一つの店舗でたくさん処方箋を受け付ければ減算され。大きなグループを作ってたくさんの処方箋を受け付ければ減算され。グループ店舗を増やすだけでも減算され。医療ビルを作っては減算され。医療モールを作っては減算され。最効率であろう敷地内薬局を作っては大減算をされました。
これでは、いくら箱を作ってもリスクに見合ったリターンが得られません。
企業努力によって得られた効率性は、なかったことにされていく風潮が作られています。
一般企業としてはあり得ない措置かと思いますが、それが医療業界というものなのでしょう。
では経営者としては、どうすれば効率を高めることができるのか?
それには、そこで働くスタッフ個人のパフォーマンスと、店舗単位での効率性の高さが非常に重要になってきます。
たった一人のスタッフが、高度な在宅医療を行い、各種報酬を理解して積極的に算定をし、かかりつけ薬剤師として選ばれ、地域支援体制加算2を算定できるだけの土壌を作ることができるだけで、大幅な増収となります。
これは経営者が現場に立たない限り、いくら経営者個人が努力をしても成立させられない内容です。
この一人のスタッフに対して、給料の上昇を渋る経営者がいるでしょうか?
もしこれで昇給させられない会社ならば、転職を検討しましょう!
このレベルの人材ならば引く手あまたです。
また、もう一つの課題である、店舗単位での効率性を上げるにはどうすればいいのか?
管理者としてのマネジメント能力が最も重要となります。
煩雑な業務が増えている中、それら整理してスタッフに上手く割り当て、後進を育て、ベテランの意識改革をし、動線を良くし、多職種との関係を良好に保つ必要があります。
これらができれば、本当に重宝される人材となるでしょう。
とはいえ、実は経営者からすると、効率を上げる他にも収益を上げる手段が3つあります。
- スタッフの給料を安く設定する
- 在宅業務のように単品では効率の悪いものを切り、各種能動的に取得が必要な報酬を最低限度以外切り、設備を最低限とし、労働効率を上げる
- 調剤報酬以外のところで収益を上げる
- については、シンプルな話ですね。研修や設備、土地の獲得といった全体に関わる案件に予算が大きく割かれ、個人への給与は少なく設定されます。大手調剤薬局にはこのパターンが多く存在するかと思います。
本当の一部精鋭を除き、給料テーブルは低めに設定されており、駒としての役割を果たすことが要求されます。
敷地内薬局を多く抱えてしまった企業はよりこの傾向が強くなっていく可能性があります。 - については特に中小企業に多いイメージですね。やれる人がいないけど、給料を今さら下げられないし、新たな人材を確保することも、育てることも難しい。といった場合に消極的に取られる手段です。
ジリ貧ではありますが、経営者としては自分の任期の間まで維持できれば問題ないという考え方もあります。 - については、ドラッグストアが該当しますね。導入としては逆で、物販メインから開始しているのが実情ではありますが。
処方箋受付数に関しては、物販の売り上げとのシナジーが期待できます。なので、調剤報酬が多少落ちたところで調剤部門の価値が比例して落ちるというわけでもないところもポイントです。
どのような薬剤師を目指していけば良いのか
この答えは、前述した中にあります。
大事なのは、個人のパフォーマンスを高めることと、管理者としてのマネジメント能力を身に着けることです。
- 高度な在宅医療を行い、自分から営業をかけて在宅案件を引っ張り、各種報酬を理解して積極的に算定をし、かかりつけ薬剤師として選ばれ、地域支援体制加算2を算定できる土壌を自ら作ることができるような個人のパフォーマンス
- 煩雑な業務が増えている中、それら整理してスタッフに上手く割り当て、後進を育て、ベテランの意識改革をし、動線を良くし、多職種との関係を良好に保つマネジメント能力
どれか一つだけでも、薬剤師として十分に戦えるスキルです。
全てができれば、企業では経営層に入り込めるだけの実力となります。
実際に自分で店舗を立ち上げても成功する可能性が高いレベルと言えるでしょう。
しかし、これも前述したとおり、企業が利益を上げるためには必ずしも全員にそういったハイレベルな役割が求めれられているわけではありません。
「いいから目の前の患者さんをさばいてくれ。」という要求に応えているだけで薬剤師生命を終えてしまうことも少なくないしょう。
環境が育ててくれることに期待していては、いつまでも成長できない可能性が高いです。
最終章まとめ
今後は薬剤師のレベルも2極化していくと考えられます。
成長のチャンスはたくさんありますが、有限で、能動的に行っていかなければ何も得られません。
①成長できないピヨピヨ巣ごもり薬剤師として薬剤師生命を終えるのか。
②変化に柔軟に対応できるハイスペックハヤブサ薬剤師として、たくさんの患者さんに頼られ、多職種の中で活躍をし、薬剤師の地位を高め、後進を育て、地域医療に大きく貢献できるようになるのか。
それは皆さんの普段からの意識と、行動次第です。
もちろん、どういった働き方が幸せなのかはそれぞれの性格や価値観次第です。
何が正解というわけではありませんよ!
しかし、私は、この記事にたどり着いた皆さんならば、②のハヤブサ薬剤師になれる資質を備えていると考えています。
まずは一つずつでいいので、行動していくことが何より大事なことです。
そのお手伝いをさせていただきたいと考えております。
説教臭いことを言ってしまいましたが、このサイトを運営している私達自身もまだまだ未熟で、奮闘している最中です。
是非是非、共に頑張っていく仲間となってくれればうれしいです。
これから一緒に学んで、行動をして、より良い未来を作っていきましょう!
執筆者:つかさ
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