服用薬剤調整支援料の対象患者・具体例・報告書様式と書き方を解説

服用薬剤調整支援料の算定戦略

2020年の改正により従来の服用薬剤調整支援料1に加え、新たに服用薬剤調整支援料2が追加されました。
要件が増えたことにより複雑に見える上に、難易度の高さから敬遠されることも多いのではないでしょうか。

地域支援体制加算の算定の要件にもなっていますが、皆さんは下記のような悩みを抱えてはいないでしょうか。

  • どういった流れで算定できるかわからない
  • 医師に対して提案することで関係性が悪くならないか心配
  • 算定したいと思っているが、対象者がいない

処方医に対しての情報提供文書を用いて減薬の提案が、特にハードルが高いと感じる要因なのではないでしょうか。

医師が治療上必要と判断している薬に対して、「この薬不要でしょ」と言わんばかりの行為にも見え、当初は私も取り組みにくい要件だと感じてしまいました。

しかし、通院期間が長い患者や受診が複数の診療科にわたる患者は、処方内容が最適化されていないケースも多いのです。本記事を読んで頂ければ、

  • 服用薬剤調整支援料1および2の算定要件
  • 算定対象患者の簡単な見つけ方
  • 処方医への情報提供文書の書き方のコツ

服用薬剤調整支援料の算定までの流れが分かり、店舗にも患者にも利益をもたらすことができます。

かい

あなたもすぐに1件、さらに複数件数の算定も可能になるでしょう!

筆者は、薬剤師歴7年、某薬局グループでエリアマネージャーをしております。携わったすべての店舗で服用薬剤調整支援料の要件を達成し、達成した店舗全てで地域支援体制加算2も算定できております。その過程で得た知見を、本日は皆さんに紹介したいと思います。

目次

服用薬剤調整支援料1および2の算定要件

やや複雑な算定要件ですが簡潔にまとめます。より詳細な算定要件や点数などはリンク先でご確認ください。

(1)服用薬剤調整支援料1
6種類以上の内服薬を4週間以上服用している
②患者に減薬の意向がある
③処方医に情報提供文書を用いて減薬の提案を行う
④2種類以上減少した状態を4週間以上継続(少なくとも1種類は当薬局で調剤しており自身が提案した薬剤)

(2)服用薬剤調整支援料2
複数の医院から合計6種類以上の内服薬を服用している(少なくとも1種類は当薬局で調剤)
②患者に減薬の意向がある
③処方医に情報提供文書を用いて減薬の提案を行う

ちなみに、本要件の条文にて、減薬等の検討を行う際に以下の書籍が推薦されております。

・「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」(厚生労働省)
・「高齢者の医薬品適正使用の指針(各論編(療養環境別))」(厚生労働省)
・「病院における高齢者のポリファーマシー対策の始め方と進め方」(厚生労働省)
・日本老年医学会の関連ガイドライン(高齢者の安全な薬物療法ガイドライン)等

同じ内容での重複投薬・相互作用等防止加算及び在宅患者重複投薬・相互作用等防止管理料は算定できません。
同一患者で1年以内に再度算定する場合は、更に2種類以上減少したときに限られます。

また、配合剤採用による剤数の減少は要件を満たさないことや、疑義紹介の形ではなく情報提供文書を用いた提案が必要であることにご留意ください。

算定までの流れ

  1. 算定可能対象者を抽出
  2. 減薬対象薬剤を選択
  3. 実際に患者もしくは家族に聴取し、減薬の意思があることを確認
  4. 情報提供文書の作成
  5. 処方医に情報提供を行い、下記場合分けに基づいて算定
 ・服用薬剤調整支援料2の場合

 この時点で算定要件を満たすので次回処方時に服用薬剤調整支援料2を算定

 ・服用薬剤調整支援料1の場合

 2種類以上減少した状態を4週間以上継続した時点で、次回処方箋受付時に服用薬剤調整支援料1を算定
 減薬を維持できない、減薬されなかった等の場合、他科受診のある患者は服用薬剤調整支援料2を算定
 他科受診がなく算定に繋がらなかったときは、服薬情報等提供料2を算定

 ・減薬提案ができる薬剤がなかった場合

 減薬の希望などの聴取内容を医師に情報提供し、次回来局時に服薬情報等提供料2を算定

かい

いずれのパターンにおいても、プラスの算定が可能です。
あなたの減薬提案は無駄にはなりませんよ。

この算定の流れを踏まえて、

  1. 算定対象患者の抽出
  2. 減薬対象となる薬剤の選択
  3. 情報提供の作成から提案のコツ

多くの方が躓くポイントである上記3点について解説していきます。
最後まで読めばあなたもすぐに実績を獲得できるレベルになっているはずです。

算定対象患者の見つけ方

算定対象患者を見つけるためには、以下の点に着目してみましょう。

  • 処方受付時の内服剤数の確認 調剤管理加算の算定対象者か
  • 来局時の手帳確認で他科受診を確認(マイナ受付により今後はさらに簡単に)
  • (漫然投与されやすい薬剤)複数科で重複しやすい薬剤をリストアップし患者を抽出

処方箋受付時の内容確認の際に錠数や他科受診の有無を把握しましょう。ざっくり分けると、
 ・6種類以上の内服薬があり、他科受診の内服薬がない方→服用薬剤調整支援料1のみの候補
 ・6種類以上の内服薬があり、他科受診の内服薬がある方→服用薬剤調整支援料1および2の候補
ということになります。

かい

他科受診の内服薬がある方は、服用薬剤調整支援料1の算定に挑戦し、
減薬できなくても服用薬剤調整支援料2が算定できますよ!

6種類以上の候補患者の中で、患者や家族からのヒアリングにて下記の内容を探りましょう。

  • 剤数や服用時点が多くアドヒアランスが低下していないか
  • 薬剤の重複や相互作用の可能性はないか
  • 効果がないまま漫然と投与されている薬剤がないか

いずれかの問題点を発見したら、患者不利益を避けるためにも積極的な提案を目指していきましょう。

かい

私の管轄の算定実績では下記に挙げた薬剤が減薬に結びついていました。

・PPI、H2ブロッカー、防御因子増強薬などの制酸剤
・睡眠導入剤、抗不安薬
・去痰薬
・鎮痛薬
・抗ヒスタミン薬
・ビタミン剤や整腸剤の漫然投与
・抗認知症薬、BPSD用の抗精神病薬等

重複しやすい薬剤や、漫然と投与されやすい薬剤については店舗内で共有しておくことで、
店舗全体としての算定へのハードルが下がります。

情報提供文書にはどんな内容を記載すればいいの?報告書様式はあるの?

服用薬剤調整支援料1においては、特に決まった様式があるわけではありません

服用薬剤調整支援料2においての報告書とは、以下の内容を含む別紙様式3又はこれに準ずるものを指します。

  (イ)受診中の保険医療機関、診療科等に関する情報
  (ロ)服用中の薬剤の一覧
  (ハ)重複投薬等に関する状況
  (ニ)副作用のおそれがある患者の症状及び関連する薬剤
  (ホ)その他(残薬、その他患者への聞き取り状況等)

上記以外にも、下記に関してはも記載すると良いでしょう。

 ・患者もしくは家族から減薬したいという希望があること
 ・減薬によって患者にどのような利益があるか
 ・減薬を行うことで患者に不利益が生じないことを薬学的知見から説明

実際の算定の具体例の段落にて、医師に送付した情報提供文書の内容も紹介していますのでご覧ください。

医師への情報提供が通りやすくなるコツ4選

いざ対象の患者を見つけても、情報提供文書に何を書けばよいかわからず、薬剤師の意図がうまく伝わらない文章になってしまうとせっかくの提案も台無しです。以下のコツをしっかり頭に入れ、準備しておきましょう。

① 日頃から自らが得た情報を医師と情報共有する

 新薬の発売前情報、時事ネタ、その日患者で気になった方の言動などを材料に定期的に医師と面会し、薬剤師主体で医師との関わりを持ちましょう。ここ数年は特に医師と共有すべき話題が多いはずです。(新型コロナ等の感染症・後発品の供給問題・選定療養など)面会を積み重ねることでこちらの話を聞いてもらえるようになることが第一です。

②直接面会して医師の処方意図やこだわりを知る

 薬剤師は添付文書やガイドラインをもとに用法容量や薬剤選択を行っていますが、医師は自身の経験に基づいた適応外処方を行うケースがある他、医師の専門分野に近い領域などでは薬剤師からの提案は受け入れてもらえないことも少なくありません。日頃の情報共有で医師との信頼関係が構築されているのであれば、直接医師に面会して気になる薬剤の処方意図を聞きに行ってみましょう。

③「薬剤師の提案」よりも「患者の希望」であることが伝わる内容にする

 この報告で一番伝えたいことは、どんな理由で患者が困っているのか、この変更によりどんな患者利益が生まれるかです。薬剤師が主張している論調にならないよう注意しましょう。「添付文書の記載と異なるから」「類似薬が他科で既に出ているから」を結論にせず、医師と患者の両方にリスペクトを持った文書に仕上がれば、上手な橋渡し役になれたと言えるでしょう。

④提案の際は直接医師とコミュニケーションをとる

②で述べたように、薬剤師からの提案に対して「処方に難癖をつけられた」と思われてしまう可能性があります。
誤解を生まないためにも、直接面会して処方意図を確認しつつ提案しましょう。
医師側にも減薬によるメリット(薬剤総合評価調整管理料:250点)があります。こういった情報も併せて伝えることで医師・患者・薬局三者にとって有益な提案となるでしょう。

かい

この流れで提案できれば、医師からも喜ばれる文書になっているはず!

実際の算定の具体例

服用薬剤調整支援料1
高血圧、糖尿病、大腿部から下肢の疼痛管理 合わせて10剤以上
疼痛管理のため、プレガバリン・メコバラミン・トアラセットを服用していたが、患者から「錠数が多くて大変、ふらつきが怖くて外出の機会も少なく、痛みやしびれを感じることがない」と訴えあり。
【提案内容】
本日の服薬指導にて患者様より、錠数が多くて内服に苦慮していること、ふらつきが怖くて外出を控えていることを聴取いたしました。残薬を確認させて頂きましたが、昼食後や夕食後メコバラミン・プレガバリン飲み忘れも見受けられる状況です。最近は疼痛やしびれの自覚はないとのことです。錠数過多による患者様の服用への意欲低下を防ぐため、①疼痛管理の薬剤を頓服に変更 ②プレガバリン、メコバラミンの減量または中止 の2点についてご検討頂けないでしょうか。

服用薬剤調整支援料2
内科、整形外科を定期受診
キャブピリン他8剤の内服薬を内科にて処方(他薬局で調剤)されており、腰の痛みで整形外科にも通院している。セレコキシブ・レバミピドの2剤が継続処方されているが、「錠剤の数が多いから貼り薬に変えてもらえないか相談したけど、痛みが広範囲だから内服のほうが良いと医師から言われた」ことを聴取した。
【提案内容】
〇年前から△△内科よりキャブピリン配合錠の処方が継続しております。錠数の多さに悩んでおり貼付剤への変更も検討されたと伺っております。服用時点および服用剤数を減らすため、前回受診時より処方されているレバミピド錠の減薬を提案させて頂きます。

かい

あなたの店舗での算定対象患者が思い浮かぶでしょうか?
早速行動に移してみてください!

算定が厳しい店舗条件

この算定要件は、眼科・皮膚科などの外用剤処方を多く扱う薬局や、耳鼻科・小児科などの急性期を多く扱う薬局では算定がやや難しいでしょう。
面薬局としての機能を充実させることで近隣の対象患者を呼び込むところから始める必要があります。

かい

小児科門前では対象患者の獲得に苦労しましたが、算定に成功しました!

薬局近隣にお住まいで、内科からの指示で訪問薬剤管理指導を実施している個人宅の患者です。
内科や整形外科を受診していますが、服薬指導の際に残薬が多数あることが発覚し、
独居での服薬管理が困難である旨を医師に情報提供し、訪問指示を頂きました。

散歩にもなるので欠かさず受診できていたものの、薬が増えすぎて困っており、
「一包化してくれて飲み忘れはなくなったが毎度飲むと数が多くてつらいなあ」と漏らしていました。

そこで、内科から処方されていたフェキソフェナジン錠、カルボシステイン錠の処方について確認したところ、
花粉症の鼻閉に処方されていた薬剤で、春以降の症状は落ち着いているとのことでした。

そこで内科医に対して2剤の減薬提案を行い、服用薬剤調整支援料1を算定しました。

在宅医療の開始前後はポリファーマシーの状態に陥っている患者も多いため、様々な加算を算定するチャンスです。
まだ在宅医療に積極的に取り組んでいない方はぜひこちらのリンクをご覧ください。 

まとめ

いかがでしたでしょうか?
服用薬剤調整支援料は、患者の服薬アドヒアランス向上重複投与の防止が最大の目的ですので、算定のチャンスを逃さないことが患者にとっても大きな利益になります。

複数の診療科を受診している患者では、お薬手帳を忘れてしまうと他科の処方薬の情報は医師に伝わりません。
かかりつけ薬局としての機能強化が以前にも増して求められているのは、このような患者を薬局で見つけ出してくださいというメッセージでもあるのかもしれませんね。

この服用薬剤調整支援は、外来服薬支援訪問薬剤管理指導に移行する場合も、末永くかかわり続ける本物の“かかりつけ”になる第一歩ではないかと思います。患者の目線に立って考えられる、最先端の薬剤師を目指しましょう!

なお、外来服薬支援料の算定についても要件の確認や算定方法が知りたい方はこちらのリンクからご確認ください。
外来服薬支援のリンクへ

ここまで読んでいただきありがとうございました。
皆様の薬剤師ライフのお役に立てると嬉しいです!
今後ともよろしくお願いします。

記者: かい

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